2026年6月12日、SpaceXがNASDAQに上場した。ティッカーシンボルは「SPCX」、公募価格は135ドル。オーバーアロットメントを含めた資金調達額は最大約860億ドル(約13.8兆円)、評価額は約1.75兆ドルと、2019年のサウジアラムコを大きく上回る史上最大のIPOが現実のものとなった。
何を買っているのか
SpaceXのビジネスは大きく3つの柱で構成される。
一つ目はStarlink。2026年3月時点で軌道上に約9,600機の衛星を展開し、164の国と地域をカバー。有料加入者数は1,030万人を超え、2025年通期売上高は前年比約50%増の約1,140億ドルに達した。衛星ブロードバンドという希少なニッチ市場でほぼ独占状態にあるこの事業が、現在の収益の中核だ。
二つ目はロケット打ち上げ事業。Falcon 9の再使用技術で打ち上げコストを革命的に引き下げ、今や世界の宇宙輸送の過半数を担う。商業・軍事・政府向けと顧客も多様だ。
三つ目はAI・データセンター事業。xAIとの統合が2026年に発表されており、宇宙インフラとAIを組み合わせた新たな事業展開が始まっている。AIインフラとの文脈でも語られる銘柄であることは、NVIDIAやCRWVを保有する投資家にとって注目点だろう。
上場直後の株価と今後の展望
初日の取引では135ドルの公募価格から大きく上昇し、176ドル超まで値が飛んだ。個人投資家への割り当てが最大30%と異例の高さに設定されたこともあり、日本を含む個人からの需要が急速に集まった。
中長期の期待は大きい。Starlinkが「宇宙のインターネット基盤」として規模を拡大し続ければ、地上のテレコム事業者に近い安定キャッシュフローを生む事業に育つ可能性がある。Starship次世代ロケットによる火星輸送、Direct-to-Cell技術によるスマートフォンへの直接衛星接続など、SF的なアップサイドが残っている点も魅力だ。
懸念すべきこと
一方で、冷静なリスク評価も必要だ。
バリュエーションは極端に高い。1.75兆ドルという評価額は、事業の実力ベースで正当化するにはまだ相当な成長が前提条件となる。Starlinkは好調だが、ロケット事業の利益率はインフラ投資によって圧迫されやすい。
マスクリスクも無視できない。イーロン・マスク氏はテスラ・xAI・X(旧Twitter)と複数の企業を抱えており、注力先によっては経営資源の分散が生じうる。また政治的な発言が株価に影響を与えるリスクも実証済みだ。
大型IPOの需給効果も要注意。野村證券のレポートが指摘するように、大型IPOの資金捻出のために他の資産が売却される動きが既に暗号資産市場で見られた。上場後しばらくはロック解除に伴う売り圧力も意識しておきたい。
SpaceXの株は「ロマン枠」と「現実の事業」が混在する複雑な投資対象だ。初値飛びに乗るのではなく、株価が落ち着いたタイミングで慎重に判断したい。
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