2026年7月12日日曜日

SKハイニックス、ナスダック上場で歴史的調達 ― 海外企業として過去最大のIPO

 

公募価格149ドル、調達額265億ドル

韓国の半導体メモリ大手SKハイニックスは、2026年7月10日、米国預託証券(ADR)をティッカーシンボル「SKHY」でナスダックに正式上場した。公募価格は1株あたり149ドルに決定し、調達額は約265億ドル(約4.3兆円)に達した。これは2014年にアリババがニューヨーク上場時に調達した250億ドルを上回り、海外企業による米国IPOとしては史上最大規模となる。米企業を含めた比較でも、857億ドルを調達したSpaceXに次ぐ世界史上2位の規模とされる。

ADRの交換比率は普通株1株に対して10ADSで、新規発行株数は1億7790万株。発行済み株式の約2.5%に相当する規模である。上場に先立つ需要調査では500社を超える海外機関投資家から供給量の7倍に達する購入意向が示され、需要の強さが裏付けられた。引受手数料は公開総額の0.97%(3888億ウォン、約420億円)で、SpaceX(0.67%)やアリババ(約1.2%)と比較される水準となっている。

初日は13%超の上昇、時価総額1兆ドル超へ

上場初日、SKHY株は公募価格を大きく上回る展開となり、株価は13〜14%超上昇。時価総額は一時1兆ドルを超えた。取引開始にあたっては、7月10日を「発行前取引(SKHYV)」、7月13日からを正式な通常取引(SKHY)とする2段階のスケジュールが採用されており、投資家には発注時の銘柄コード確認が呼びかけられていた。

調達資金の使途は明確で、韓国内の生産能力拡大に充当される。具体的には、龍仁(ヨンイン)半導体クラスターの新工場建設や、ASMLからの極端紫外線(EUV)露光装置の調達(約80億ドル相当、約30台)などが含まれる。当初2044年完成予定だった龍仁クラスターの稼働は2034年へ前倒しが議論されており、SKグループの崔泰源会長は2034年までにウエハー生産能力を現状の3倍に引き上げる方針を示している。

「アクセスのディスカウント」解消への期待

SKハイニックスは高帯域幅メモリ(HBM)市場で世界首位のシェアを持ちながら、DRAM市場でシェア・営業利益ともに3位のMicron Technologyと比較して、PERで20〜40%低い水準に据え置かれてきた。ある投資家はこの状況について、品質面での割引ではなく、米国機関投資家が容易に保有できなかったことによる「アクセスの割引」だったと説明している。

ナスダック上場後は、ナスダック100指数やフィラデルフィア半導体指数への早期組み入れが見込まれており、Invesco QQQ TrustやSOXX、SMHといった主要ETFによるパッシブ資金の流入が期待される。これにより、これまでソウル市場のみに上場していた際には存在しなかった構造的な買い需要が生まれる可能性がある。

今後の焦点:韓国本株とのプレミアム・裁定取引

一方で、ADR上場がそのまま株価上昇に直結する保証はない点には留意が必要である。証券業界では、初日の株価そのものよりも、米国と韓国の価格関係がどう形成されるかを重視する見方が多い。米国で生じたプレミアムが韓国本株に波及するのか、あるいは裁定取引によって早期に解消されるのかが、今後のバリュエーション形成における核心的な変数になるとみられている。実際、上場発表当日の韓国市場ではSKハイニックス株の反応は限定的で、米国側のプレミアムと韓国本株の評価が必ずしも連動していない点も指摘されている。

また、メモリセクター全体では、SKハイニックスの直接上場によって機関投資家資金の一部がMicronから流出する可能性も取り沙汰されており、比較対象の増加が業界理解を助ける一方で、資金シフトとバリュエーション比較という相反する効果が同時に働く可能性がある。

なお、レバレッジ型ETFを通じたSKハイニックス関連のポジションは総額190億ドル規模に膨らんでいるとの指摘もあり、平均出来高の4倍超に達する水準となっている。強制的な解消売りのリスクは限定的とみられているものの、値動きの振れ幅には引き続き注意が必要とされる。

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